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ニコニコしながらお義母さんが聞いてくる。私もにっこり営業スマイルでこたえた。
「試行錯誤しながらですが、楽しく過ごせています」
「あらよかった! ほら、あの子は夜遅くまで仕事してるし、支えてくれる奥さんができて本当に喜んでるの」
(言えない……料理とかもほとんどせず巧の方が上手いなんて……)
「もう、この人が働かせすぎなのよ。もっと早く帰れるようにしてくださいな」
(言えない……遅く帰ってくるのを待つ良妻なんかじゃなく先に寝てることも多々あるなんて……)
引き攣りそうになる笑顔をなんとか自然に戻し、店員さんが運んでくれたメニューを開いて簡単に注文する。お酒はやめておいた、酔っ払って頭の回転が遅くなっては困る。
隣に座る樹くんが言う。
「巧そんな帰り遅いの?」
「え? ああ……そうだね、平日は結構ね」
「いやあ、息子の方が仕事ができるんだよ。ついつい任せてしまってね」
わははと笑う藤ヶ谷社長は少し顔を赤くしながら日本酒を飲んだ。お義母さんが私と樹くんを交互に見つめて言う。
「それよりあんたたち二人で食事するくらい仲良くなったの? いつのまに!」
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