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辛い。この状況は非常に辛い。私一人で誤魔化しきれるだろうか。巧にも来れたら来るように連絡は入れておいたけど、仕事が終わるのいつも遅いからそんなすぐには来れないだろう。なんとか私一人で間を持たせないと……!
涼しい顔をしながら体はぐっしょり汗をかいていると、突然背後から声が聞こえた。
「なんで父さんと母さんまでいるんだ」
はっとして振り返る。私以上に汗だくになっている巧が立っていた。いつもピシッとしているスーツもやや乱れている。
「巧……!」
「まーたいらないやつが来ちゃったよー杏奈ちゃんと二人きりはどこにいったやら」
隣の樹くんが顔を歪めて言った。反対に、義両親は嬉しそうに笑う。家族みんなで食事をするということが貴重なんだろうと思った。
「巧! お前よくこんな早く来れたな」
「杏奈から連絡もらって……まあ、残った分の仕事は明日朝行ってやろうと思ってる。というか父さん上がるの早すぎだ」
「わはは、すまんなあ。ほら座れ座れ。明日朝私も仕事に付き合うから」
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