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巧が私の隣に腰掛ける。額にかいた汗がまぶしい。もしやまだ樹くんのことを心配していてこんなに急いでくれたんだろうか。
どこか嬉しさを噛み締めながら巧にメニューを手渡す。ソフトドリンクを注文し、彼はようやく一息ついた。
お義母さんが前のめりになって言った。
「今ね、杏奈さんと新婚旅行の話してたのよ〜まだもう少し先になっちゃうと思うけどね。予約は早くしたほうがいいわよって」
「ああ……まあ、式もまだしばらく先になるし、ゆっくり考えつつな」
巧はサラリと交わす。あっさりとした返答にどこか不満げなお義母さんが、あっと思い出したように言った。
「ねえ! 今度この人と温泉に行こうと思ってるの、よかったら巧たちも来なさいな! たまには杏奈ちゃんゆっくりさせてあげなさい!」
ギョッとしてお義母さんを二度見した。気づいていないのかそれでも続ける。
「ちょっと息抜きに、プチ新婚旅行! どう?」
「いや、仕事休めないし」
「温泉なら一泊二日でもいいじゃない、土日でいけるわよ。ねえ杏奈さん?」
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