想定外の再会

16/28

2836人が本棚に入れています
本棚に追加
/382ページ
「麻里ちゃん、私は何を準備したらよいだろう」  私は旅行バッグの前に正座をして、背筋をピンと伸ばしたまま無表情で尋ねた。  電話口の麻里ちゃんはキョトンとした様子で答えてくる。 『え、着替えの下着とかースキンケア用品とか、メイク道具もいるしー』 「そうじゃない。麻里ちゃん、そうじゃない」 『あー夜に向けてってこと? あれ、むしろまだ済ませてなかった?』 「オフコース、済ませてたら温泉行くのにこんなに緊張してない!!」  私はつい焦って声を荒げた。すぐにはっと冷静になり咳払いをする。落ち着け、落ち着くんだ。  あれからお義母さんの仕事は早く、食事をした三週間後に温泉旅行の日が来てしまった。これから巧の車で隣県の温泉旅館まで向かうことになっている。  旅行カバンに着替え等しっかり準備を行った後、私は耐えきれない緊張と混乱で麻里ちゃんに電話を掛けていた。  部屋割りは巧と私二人の部屋となる。それが普通だ。今までだって一つ屋根の下に過ごしてきたわけだが、お互いの部屋はあったし寝る時だって無論別々だった。
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2836人が本棚に入れています
本棚に追加