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私は携帯を耳に当てたまま床に倒れ込んだ。そう、チキン南蛮味のキスだけしたまま、それ以降結局何もしてないいい大人の私たち。
だってしょうがない、私から動くわけにもいかないし。でも確かにまあ、一般的に考えてかなりスローなペースであることは流石に理解していた。
付き合うとなって一ヶ月。一つ屋根の下にいながら、たった一度のキスのみとは。
だがしかしさすがに同室で過ごすとなれば状況は変わるだろう。てゆうかむしろその状況で何もなかったら私たちはきっと永遠に何もない。
『別に何もいらないんじゃない、一番大事なのは気持ちの問題でしょ』
「気持ちとは……? さすがに私もいい大人だしその階段ぐらい登るつもりはある」
『成長したねえ杏奈! じゃあ大丈夫よ、ヨレヨレの下着だけ避けときゃいいって!』
「ほんとにい……? もうわかんないよ、吐きそう」
『いい悩みだね杏奈! 初々しいわ〜私までワクワクしちゃう! 楽しんできてね温泉!』
完全に面白がってる麻里ちゃんをちょっとだけ恨みながら電話を切った。相談したのが間違いだっただろうか、私っていつも麻里ちゃんに赤裸々すぎだよね。
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