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はあとため息をついたところで、突然部屋にノックの音が響いて体が飛び跳ねた。巧が私の部屋を訪れるのは非常に珍しい。
「は、はい!?」
「杏奈、行けるか?」
「あ、う、うん大丈夫!」
扉の向こうからそれだけ声をかけてきた巧は、そのまま玄関へと向かっていったらしかった。私は荷物の最終確認を行うと、しっかりオーウェンに挨拶をしてから自室を出る。
ちらりと玄関をみると、もう靴も履き終えた巧が立っていた。そして私の持つ鞄を見る。
「忘れもんないか?」
「あ、多分大丈夫」
「ま、忘れたら買えばいいからな。行こう」
私も靴を履いて玄関の扉から出た。巧と並んで駐車場を目指して歩いていると、困ったように彼が言う。
「悪かったな」
「え?」
「うちの親、強引で。こんなことになるとは」
「いやそんな、温泉は楽しみだよ! 別にお義母さんたちとはほとんど別行動だっていうからそんなに色々バレるか心配しなくてよさそうだし。最悪巧が一緒だから誤魔化せそう。この前巧がいない時はいつボロが出るか心配だったから……」
「まあな、今回は一緒だからなんか聞かれたら俺に合わせておけばいい」
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