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言いかけた言葉が止まる。窓際にある椅子に腰掛けていた巧が振り返ってこちらを見て目が合った。
紺色の浴衣に身を包んだ巧が、想像以上に似合っていて停止してしまったのだ。
無駄に身長が高くスタイルがいい体に、黒髪と整った顔立ちは和装が非常によく似合っていた。正直どっかの雑誌に載っていてもおかしくないんじゃないかと思った。
……ひぇっ、やばい、巧がカッコいい!
そう思った自分に衝撃を受けた。私は自分の付き合ってる人(夫)をカッコいい〜だなんて思うイタイ女だったのか! いや、付き合ってるんだからそれくらい思ってもいいのか? これが普通なの? そりゃ巧は元々外見は整っていた。でも日常生活で、改めてかっこいいなんて思ったこと一度もなかったのに。
非常に、戸惑っている。心がむず痒い。
「杏奈? どうした」
「あ、いえ、なん、いやあ……」
「本当風呂長かったな。俺とっくに出てきてた」
「そ、のようだね」
とりあえず彼から顔を背けて部屋に入り襖を閉めた。しずしずと敷いてある座布団の上に正座し小さくなる。
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