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今更だけど私なかなかすごい人と結婚してるんだな。ビジュアルは文句の付けようがない。しかも藤ヶ谷副社長、だなんて。
「杏奈?」
「あ、お風呂すんごいよかったねーあはははは」
「なんで棒読み」
「ちょっとのぼせちゃって。あは」
「……ああ。俺の浴衣そんなに新鮮だった?」
意地悪そうな声が聞こえて顔を上げる。見ると、巧は勝ち誇ったように口角を上げてこちらを見ていた。自信に満ち溢れているその顔をみて思い出す。
そうだった。ビジュアルもステータスも文句なしのこの男の欠点は性格が歪んでるところだった。
巧が立ち上がり私のところに歩み寄る。しゃがみ込み、私の顔を覗き込む。随分と嬉しそうだ。
「浴衣好きだった?」
「いえどちらかと言えば異国の王族の方が」
「は?」
「あ、いや! えーと、まあ、似合ってると思うよ」
なんだか恥ずかしいがそこは素直に告げる。でも彼にその返事は物足りなかったらしい。ずいっと私に顔を寄せて不満げに言う。
「まあ似合ってるってなんだよ」
「え、似合ってるって褒めてるじゃん」
「見惚れるほどカッコよかったって言えばいいのに」
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