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この男自分でこんな台詞言ってて恥ずかしくないのか? 呆れてその顔を見上げてみると、巧が子供みたいに私を見ているのに気がついた。
楽しそうに期待している顔で、私を見ている。
その顔が吹き出してしまいそうなくらい面白くて可愛く見えてしまって、私はつい笑いながら言った。
「……あは、うん、そうだね」
「え?」
「見惚れてた。新鮮で、カッコよくて。すごく似合ってるよ、浴衣」
私がそう言い終わった瞬間、あれだけ期待している顔をしていたくせにこの男は面食らったように目を見開き、そしてすぐに顔を赤くさせた。
その光景がまたしても面白くて笑ってしまった。普段すました顔して自信家のくせに、照れたりするとすぐ赤面するのを私は知っているのだ。
なによ、もう。こう言わせようとしてたのはそっちじゃない。
笑われていることが不愉快だったのか、巧は気まずそうに私から視線を逸らして立ち上がろうとする。その袖を慌てて引っ張った。
「あ、ちょっと」
「何」
「私は? 私の浴衣、可愛くて死にそう? のぼせそう?」
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