残念な頭でいざのぞむ

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 それから夕飯はお義父さんたちの部屋でみんな揃ってとった。  樹くんもそこにはいて、今回彼のみ一人で宿泊しているらしかった。まあそれもそうか。  こんな豪華な旅館に一人で泊まるだなんて金持ちの感覚は凄い、とまた感心しながら目の前に並べられた豪勢な食事に舌鼓を打つ。新鮮なお刺身、上品な味付け、柔らかな肉! 肉! 肉!!    残念ながらお酒は飲まないでおいた。酔っ払ってどこでどうボロを出すか分からないと自分で控えたのだ。  非常に楽しそうにしているのは誰よりも義両親だった。というのも、やっぱり兄弟仲がよろしくない二人とみんなで食事をとったりお酒を飲んだりすること自体珍しいことらしく、特にお義母さんはニコニコしながら何度も私にお礼を言った。何もしていないのだが……。  そんな両親や樹くんを見て心が少しだけ痛んだ。なんせ私たちは彼らに大きな嘘をついているから。出会いだってこれまでの経緯だって嘘にまみれた二人なんだ。  そりゃ今は一応付き合っているから、以前よりは嘘が減ったかもしれない。でもやっぱり、自分の心の中にある良心は少し痛むのだ。
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