残念な頭でいざのぞむ

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「はあ〜楽しかったわ、杏奈さんとっても面白い方だし」  お義母さんがお酒のためにやや赤らんだ顔でそう笑った。私も笑い返す。 「私も楽しかったです。それにお食事がとっても美味しくて……! ふふ、食べすぎちゃいました」 「いいのよ〜美味しいものをお腹いっぱい食べられるのは若いうちだけよ! 杏奈さんなんてスタイルもいいんだし気にすることないわ、ねえ巧!」  私のとなりで顔色一つ変えずに日本酒を飲んでいた巧は顔を上げた。なかなか酒が強い。結構飲んでいると思うのだが、みんなからの質問などにもそつなく答えている。 「ああ、藤ヶ谷家の嫁として肥満は避けてもらいたいが」 「まーったこの子はこういうこと言うのよ。昔から素直じゃないわ、一言多いっていうか口が悪いっていうか」  大きな口を開けて笑うお義母さんは本当に楽しそうだった。初めて会った時は、やっぱりお金持ちの奥様という感じだったけれど、話してみればわかる。なんてことない、普通の『母親』なのだ。  私は微笑みながらその顔を見ている。  ふと時計を見たお義父さんが、持っていたグラスを置いて声を上げた。
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