残念な頭でいざのぞむ

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 部屋に戻るのが何となく恥ずかしくて気まずい私は長い間お風呂を堪能した。洗うのは大浴場で洗ってきたし、そうやることもない。  まあ、多分だけど……デートすらよくわかってない私なんだからこういうのも慣れてないって巧は感づいてるはずだし、もう相手に任せておけばいいのかな。  火照った体を仰ぎながら私は立ち上がる。時計がないので今が何時かよくわからないが、結構いい時間だと思う。そろそろ出て寝る準備をしなくては。  緊張する心を押さえてとりあえず再び浴衣を着用した。麻里ちゃんの助言通りヨレヨレの下着は避けた。  濡れてしまった髪を今一度ドライヤーで乾かすと、私はゆっくりと部屋へ戻っていく。  緊張しながら戸を開けると、窓際の椅子に腰掛けて水を飲んでいる巧がこちらを見た。その目と合ってついどきりとする。 「あ、いいお湯、でした……」 「なっが。溺れてるのかとそろそろ見に行こうかと思ってた」 「女は長風呂ですから!」 「長風呂にも程があるだろ。溶けそう」
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