残念な頭でいざのぞむ

20/30

2833人が本棚に入れています
本棚に追加
/382ページ
 そう断言したのを聞いてつい恥ずかしさで目 線を下す。ちょっと嬉しい気がする自分は重症かもしれない。 「……じゃあ、そうする」 「鍵ちゃんとかけて寝ろよ。おやすみ」  テーブルの上に置きっぱなしにしている樹くんの部屋の鍵を手にとり、簡単に荷物だけ手にした。ちらりと巧を見ると、新しいビールを開けてまたあおっている。  その横顔が拗ねたような、不機嫌なような顔立ちで、なぜか私はちょっとだけ嬉しかった。  翌朝、身支度を整えて自分の部屋に戻ると、スッキリした顔の樹くんとぐったりした巧がいた。「いやーごめんごめん」と笑う樹くん、嫌がらせ成功して楽しくて仕方ないって顔してる。  その上巧に帰れと言われてもそのまま居座り、三人で豪華な朝食を食べることになった。巧の不機嫌はピークに達していてハラハラしそうだった。  結局チェックアウトギリギリになるまで三人で過ごし、そのあとは当然のように私たちの車に乗り込もうとした樹くんを、巧は華麗に置き去りにした。以前から思ってたけど、樹くんも大概だが巧もなかなか幼稚で負けず嫌いだと思う。
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2833人が本棚に入れています
本棚に追加