残念な頭でいざのぞむ

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 ようやく樹くんを引き剥がしたことに安堵した巧と、せっかくなので軽く観光した。お土産もたんまり購入し、その土地の美味しい食物を大量に車に詰め込む。  観光はまた新鮮だった。巧と見知らぬ土地を見て回るのは楽しかったし、色々なことに博識な巧には驚かされた。忘れてたけどこの人頭はいいんだっけ。  昨晩はどうも不完全燃焼だったけれど、ようやく二人のリズムを取り戻して私たちは過ごせていた。 「ほんっとにさ。樹は昔からああやって意地が悪い」  辺りも暗くなった頃、自宅のマンションに向かって巧と車で揺られている中、彼はいまだ恨みを言っていた。いつもすました顔をしてる巧が、こんなにぐちぐちいうの珍しい気がする。  私は小さく笑った。 「でも私、今回のことで思ったんだけど。二人ってこう、喧嘩するほど仲がいいみたいなところない?」 「ない」 「だって本当に嫌いだったら存在無視するでしょ? 悪戯好きの樹くんに、困ってる巧って感じ。まあ樹くんは悪戯がすぎるんだけど」 「それだよ。あいつは加減ってものを知らない。昔から俺が持ってるものを欲しがるし横取りしようとする」
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