残念な頭でいざのぞむ

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 巧がわかりやすく停止しているのに気づいた私はアタフタと慌てた。絶対ダメっていうのは、私の部屋に入ることであって、別に巧自身を拒絶しているわけではないのに! 「あ、たく」 「そ、うか、分かった」  私がフォローしようと声を出すが、巧の耳には入っていないようだった。彼は気まずそうに視線を落とし、そのままふいっと顔を背けて私の隣を通り抜けた。 「あ、ちょ、待っ」 「今日は疲れてるもんな、うん」  慌てて巧の背中に声をかけるも、巧は振り返らなかった。もはや意気消沈している様子でそのままフラフラと隣の巧の部屋へと入っていってしまったのだ。  やらかした。盛大にやらかした。  私はその場にしゃがみ込んで頭を抱える。そりゃ巧も驚くよ、昨日の夜は進めそうだったのに今日になった途端強く拒否られちゃ。いい年した大人の男女が未だキス止まりなんてありえないのに。  どうしよう。でも今更どう説明すればいいんだ。恋愛初心者の私はそんなことすらわからない。  玄関にたくさん積まれたままのお土産たちを見てただただ自分の適応力のなさに呆れた。誰か私を殴り倒してほしい。
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