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人間、キャパシティを超えるとただ呆然とするらしい。
私は今聞こえたセリフが理解できず、ただばかみたいに口を開けたまま安西さんを見ていた。反して彼女は涼しい顔でにっこり微笑み、腹部を撫でている。
妊娠?
ぽっこりとしているお腹を見下ろした。なぜ初めに気づかなかったんだと呆れるくらい、それは大きな腹部だった。
「はあ? 妊娠って……何言ってんだあんた」
反応したのは私ではなく隣の樹くんだった。
「もう六ヶ月です」
「はあ? 六ヶ月……!?」
「ふふ、驚かせてしまいましたよね。無理もありません」
頭の中がぐるぐると回って混乱する。何を言えばいいのか、何をきけばいいのか。情けないことに、私は感情すら失ってしまっていた。
巧の子供を、この人が宿している……?
「つき、あっていたんですか、巧と……」
最初に出たセリフはそれだった。
だが、安西さんはふふっと小さく笑う。
「いいえ。正式にお付き合いしていたわけじゃありません」
「え……」
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