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「巧さんって、特定の恋人を作らないことで有名でしたから。だから結婚の知らせを聞いて驚きました、どうやってこぎつけたんです? 妊娠ではなさそうですね?」
安西さんは私の足元を見てそう言った。私の足はヒールを履いている。
そりゃそうだよ、私が妊娠してるわけがない。だって、巧とはそんな関係ですらないから。
ただ呆然と安西さんを見た。でも、この人とはそう言う関係だったんだ。
私の顔を見て、安西さんは微笑む。かばんから小さなメモを取り出して私に差し出した。
「今日は驚いて会話にならなそうですね。まあ当然のことです。頭の中が整理できたらまたご連絡いただけますか? いいお返事をお待ちしています」
何も言い返さずメモを受け取る。電話番号が記されていた。
「まあ……答えは決まっていますよね。だって、子供がいるんですから。ね?」
安西さんにそう言われ、何も言い返せなかった。樹くんがカッとなったようにして言う。
「突然きてなんだあんた……! 妊娠してたならなんでもっと早く言ってこなかったんだよ、今更になって……! 本当に巧の子かよ!」
「堕ろせ、だなんて言われないようにですよ」
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