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家に帰り未だ呆然としたまま巧を待った。
食事は喉を通らなかった。かろうじてお風呂だけは入り済ませておく。ここ最近帰りの遅い巧とは少し顔を合わせる程度か、もしくは先に寝てしまっていることもあった。
今日ばかりは寝ているわけにもいかず、私はリビングでぼうっとしながら椅子に座っていた。
日付が変わりそうになる頃、玄関のあく音がした。びくっと体が反応する。そのまま立ち上がることもせず、私は座ったまま巧を待った。
廊下から足音が聞こえ、リビングへの扉が開いた瞬間、驚いた巧の顔が目に入る。
「なんだ、起きてたのか」
「……おかえり」
とりあえず、微笑んで挨拶を交わす。巧はふうとため息をつきながら中へ入ってきた。
「ただいま」
「忙しそうだね」
「ああ、ちょっとトラブルがあって。明日から急遽出張に行かなきゃならなくなった。せっかくの休日に最悪だ」
心底嫌そうな顔をして巧がいう。私は一旦口を開くも、すぐにそれを閉じた。
冷蔵庫から飲み物を取り出しながら巧が続ける。
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