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「多分三日くらいで帰ってくる。帰ってきた後は流石に休み入れるから。しばらく一人になるから戸締りちゃんとしとけよ」
「……わかった」
「飲みすぎないように」
「うん」
グラスに氷とお茶を注いでその場で飲んでいる巧を横目で見る。なぜか、安西さんと巧が並んでいる姿を想像してしまった。それを振り払うように頭を振り、テーブルの上に置いた自分の拳を握る。
「ねえ」
「ん?」
「安西唯さんって、知ってる?」
私がそう言った瞬間、巧が驚いたようにしてこちらを振り返った顔が視界に入った。せっかく入れたお茶をキッチンの隅に置きっぱなしにしたまま、巧が寄ってくる。
随分と険しい顔で、彼は私を見下ろした。
「……どこでその名前を?」
やや切羽詰まったその声を聞いて、これまで感情を失ったようになっていた自分の心が一気に動いた。
こんな反応が返ってくるなんて。正直、予想外だった。きっとすました顔で「知ってるけど何で」ぐらいの答えを想定していた。
そう思った瞬間、私はようやく自分で気がついたのだ。
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