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巧の子供を妊娠しているだなんて心のどこかで信じたくなかった。実は安西さんの狂言で、巧ははあ? という顔で答えて欲しかったんだ。きっと今のいままで、私は心の底でそんな展開を待ち望んでいた。
でも巧のこの反応を見て、安西さんとただならぬ関係があったのだと確信させられる。
もしかして、
本当はずっと安西さんの妊娠を知っていた、とか??
「杏奈?」
心配そうに名を呼んでくる巧を見てはっとする。
ううん、それはない。きっとそんなこと巧に限ってあるはずがない。ちょっと性格に難ありだけど、でもこの人は私を騙すようなことだけはしない。不器用だけどまっすぐだから。
だから……
そんな焦ったようなあなたの顔、見たくない。
「……お見合い、したことあるって聞いて」
「あ、ああ……杏奈と会う前にな。他にも何人かしたことはあるから、そのうちの一人ってだけ」
「そう……」
「まさか、安西唯と会ったのか?」
うわずった巧の声と珍しく焦る表情は、疑惑を確信に変えていく。
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