真実は?

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 樹くんはぶつぶつと一人でつぶやいた。そして意を決したように私に尋ねる。 「ねえ、この前言ってたこと。どういうことなの、本当は付き合ってる期間なんかなかったの?」  聞かれると覚悟していた質問をぶつけられた。  設定では巧とは一年付き合って入籍したことになっている。でも実際は違う。契約上の結婚で、その後私たちは付き合いだした。まだ浅い関係なのだ。  今まで必死に樹くんに隠してきたが、ここまで来てしまってもう無理だと思った。それに今更バレてももう構わない。私は諦めて真実を言う。 「前樹くんが言ってたみたいに……私たち、初めは契約結婚だったの」 「は」 「私は祖母が終末期で安心させたかったし、巧はとにかくご両親からの結婚の圧をなんとかしたかったって。二人納得して入籍した。ルームシェアしてただけだったの」  樹くんはぽかんとしたまま棒立ちになっていた。彼ならこんな答え予想しているかと思っていたのだが、どうやら想定外だったらしい。 「え、でもだって、二人仲良く……」 「それから付き合い出したの。付き合うっていうのも変な言い方だけどね。巧が事故にあった頃からようやくだよ」
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