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「う、うそでしょ……?」
頭を抱えて理解に苦しんでいた。普通はそうなるか。私は苦笑する。
「だからね、巧は安西さんと私を被らせていたわけじゃないし。私と巧の歴史もすごく浅いの」
「だから……離婚するってこと?」
私は黙り込んだ。なんて答えていいか分からなかった。
巧とまだ話せていないけれど、これ以外の結論が私には浮かばないのだ。
「出張から帰ってきたら、ちゃんと話さなきゃ。子供は今も育ってるんだもんね」
ポツリと呟き苦笑いした。
樹くんは何も答えず、ただ黙って私を見ていた。その真っ直ぐな視線が苦しくて目を逸らす。
「ごめんね、騙してて」
「……俺今日ここ泊まるから」
謝った私に対しての返事はなぜかそれだった。驚いて顔をあげる。
「え?」
「だってまだ俺は義弟なんだし、別にいいでしょ」
「よ、よくないよ」
「いいじゃん、もう巧とは離婚するんでしょ。なら気にしなくてもいいじゃん」
そう言い捨てた樹くんは、スタスタと歩いてソファにどしんと腰掛けた。私はオロオロと戸惑う。
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