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冷えたグラスを両手で包んだ。巧の顔が思い浮かびそうになったのを必死に拒否するようにビールを飲み込む。
「いい飲みっぷり! すみませーんビールもう一つ!」
樹くんが笑いながらそう注文してくれた。
店員がすぐに新しいビールを持ってきてくれるのをぼんやり眺めながら思う。
ああ、樹くんと二人になるなっていうのも、飲みすぎるなっていうのも、約束破りまくり……。
そういえば巧とファミレスなんてきたことなかった。最近ようやくデートらしいデートをするようになってて、それでも数はまだまだ少ない。平日は時間も合わないし、休日も家でゆっくりすることも多かった。
巧とファミレスとか来たら、面白かったかな。
「どっか行きたいとこない?」
樹くんが私の顔を覗き込んできた。
はっとして考える。
「え、どこだろう……」
「映画とかでもいいし、カラオケとかボーリング?」
ニコニコと笑いながら聞いてくる樹くんに、あれいつのまに遊びに行くことになってたんだろう、と思う。泊まるってなっても遊びに行くだなんて……
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