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真夜中三時過ぎ。私は電気をつけたままリビングで寝てしまっていた。
昨日だってほとんど寝れていない。疲れもあり、ようやくうとうとしていた頃だった。玄関の開く音がした。
はっと顔を持ち上げる。時計を見て今が真夜中だと知る。ガタガタとなんだか騒がしい音がして、足音が大きく響きながらこちらへ向かってきた。
そして勢いよく開いた扉の向こうには、スウェット姿の巧が険しい表情で立っていた。
「……巧」
「杏奈! 無事だったのか!」
第一声に彼はそう言った。そして私に駆け寄り、はあーと大きく息を吐く。髪も乱れた彼の姿を、私は呆然とみつめていた。
「樹が杏奈になんかしたのかって……心配で」
「ま、まさか! 樹くんは何もしてないよ」
私が樹くんを庇うと、巧はギロリと私を睨んだ。つい体が強張る。
「なんで樹があんな時間にここにいたんだよ? 俺がいないのに家にまで入れるだなんて」
「それは」
「それに泣いてたって。何があった? なんで俺じゃなくて樹を頼った」
巧は本気で怒っているようだった。険しい表情がそれを物語っている。
それなのに。彼を怒らせているというのに、
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