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「……ごめん。不安にさせて」
「ううん、巧は悪くない。ただ、昨日安西さんの名前を聞いたら珍しく戸惑ってたから、私は勝手に真実だって思い込んじゃって」
「あの女どうみてもヤバいやつだったから、俺の結婚聞きつけて何かしてきたのかと思って。あの日以来ずっと大人しかったからもういいかと安心してたんだけど」
「そういうこと……」
はあ、と大きくため息をついた。私の頭を撫でていた手が、そっと降りて私の手を握る。
巧はじっとこちらを見て言った。
「でも、杏奈がそれでもそばにいたいって言ってくれて嬉しかった」
彼の手の力は強く、痛いと感じるほどだった。それでもその力強さが、今は嬉しい。
髪を振り乱してスウェット姿で真夜中に帰ってきてくれたのが、私は嬉しい。
「信じてほしい。嘘じゃないから。安西唯とは何もない。俺は杏奈としか結婚したくないし、もし杏奈がいなくなったら一生独身でいる」
「……信じてる」
「だから、今みたいに何か不安なことはすぐに言って。俺以外に言うな。杏奈が何をわがまま言っても、全部受け止める自信があるから」
巧はそうキッパリいって、私を抱きしめた。
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