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安西グループは、藤ヶ谷家とまではいかないも有名な方々だ。その出立ちからもよくわかる。身につけているのはブランド品ばかりだ。むしろお義父さん、お義母さんたちの方がもう少し近寄りやすくてフレンドリーな感じがするくらい。
安西さんの父が、にっこりと笑った。
普通娘を妊娠させた相手を見たら殴りかかるのが父親かと思っていた。しかも、既婚者なのに。
不思議に思いながらも、椅子に腰掛けた巧の隣に慌てて腰掛けた。
「いやあ、久しぶりですね巧くん。お父様はお元気で?」
「ええ、おかげさまで」
「それは何より。えーと隣の方は」
「妻の杏奈です」
私は頭を下げた。緊張で吐き出しそうなのを必死に抑える。三人からの視線が痛く感じた。
頭を上げると、唯さんと目が合う。気まずさが極限で、私は目を逸らした。
その光景が彼女には嬉しかったのかもしれない。満面の笑みで巧に話しかけた。
「巧さんお久しぶりです唯です。その節はどうも」
「どうも」
ぶっきらぼうに返事をした巧は、ちっとも緊張してる素振りなんて見せずに言った。
「早速ですが、唯さんのお腹の中に私の子がいるとか」
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