隠し事はもうしない

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 全てをちゃんと伝える必要がある。それが、私に出来る誠意の示し。  何度か角度を変えてキスを交わしたあと、少し彼が離れる。その顔はいつだったか見た、野生っぽい顔だった。  ぐっと心が苦しくなる。  私はまだ巧に言えていないことがあるから 「……あの、杏」 「あのね。聞いてほしいことがあるの」  巧の呼びかけに重なるよう私は言った。  声が少しだけ震えてしまった。 「……え?」 「聞いてほしいっていうか、見てほしいっていうか……その、私の部屋に来てくれる?」  私の部屋、と言った瞬間巧が少しだけ目を見開いた。彼は未だかつて一度も私の部屋に来たことはないのだ。  無言でそろそろと二人廊下に出る。きちんと閉じられたそのドアの前で、私は深呼吸をした。  ちゃんと話さなきゃダメだ。あの日断ったのだって、この部屋のせいだったって、ちゃんと伝えないと。  隠し事はダメだって言われたばかりだから。 「あけ、て、ください」 「? は、はあ」  巧は不思議そうに首を傾げながらドアノブに手をかける。そしてついに、その禁断の扉が開かれた。
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