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でも今は違う。巧と一緒に暮らして、彼は私の生活の一部になっている。私の趣味を隠すことで彼と変な誤解が生まれるくらいなら、しっかり言ったほうがいいと思ったんだ。
……ただ、巧が引いたらどうしよう、という心配はあったけど。
しばらく沈黙が流れた後、突然巧は言った。
「あれなんて名前のキャラ?」
巧が指さしたのは、私の一番の推し、オーウェンのポスターだった。
「あのキャラのグッズが一番多い」
「お、オーウェン」
「ふーん、オーウェンか」
何度か頷きながら巧がポスターを眺める。そして振り返り、私に笑いかけた。
「オーウェンに今感謝しといた」
「はい?」
「杏奈がこいつにはまってなかったら、俺と出会ったときフリーじゃなかったかもしれないだろ。恩人だよ」
巧は白い歯を出して、そう笑った。
ぐっと胸が苦しくなった。
ずっと必死に隠してきた私のトップシークレット。
引かずに受け止めてもらえるなんて、思ってなかった。
嫌な顔一つしない巧の気遣いが、嬉しい。
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