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「……はっ!!」
「普通忘れる?」
少し笑って巧が言った。確かに、その日は私の誕生日だった。
ここ最近そんなこと思い出す余裕なんてなかったもん、忘れててもしょうがないと思う。
でも巧は覚えててくれたんだ。嬉しくなって笑顔になる。
「忘れてた、覚えててくれてありがとう!」
「忘れんな」
「ええ、どうしよう。うーん肉もいいけどー」
「杏奈の好きなところでいい」
じっと考える。そりゃいい肉食べるとか、おしゃれなレストランとかもいいけど……
「……家がいいなあ」
ポツリとつぶやいた。
「え?」
「別にピザとかとればいいから。家でゆっくりしたいな。なんか最近、巧とゆっくりしてないから」
そう。なんだか色々あって、一緒の家にいるのに全然息抜きできていない気がする。出かけるよりゆっくりしたほうがいいなと本心で思った。
黙っていた巧が一瞬だけ目を見開く。そして呆れたようにため息をついた。
「杏奈は煽るセリフだけ妙に上手いよな」
「え?」
「いや、わかった。じゃあ欲しいものは。先に聞いておく」
「えー誕生日プレゼント!?」
「なんでも言ってみろ」
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