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いや、巧といえば実は私より料理が上手い。何度も作ってもらったことはあるし、私が彼に作った回数より多いくらいだ。
でもまさか、誕生日にも作ってくれるなんて。
……普通男女逆じゃない? 今更だけど巧なんで私なんかがいいの?
黙々と調理を続けた彼はどんどん品数を増やしていった。私にはまるで出来ない手際のよさだった。
その日は和食らしく、丁寧で見栄えもいい料理でテーブルが埋め尽くされていく。
「いや、巧……引くぐらい凄い」
「引くなよ」
全て完成した頃、私は本当にちょっと引いて言った。
所狭しと並ぶおいしそうな料理たち。嘘でしょ、これ全部作ったの?
「初めに言っておくけど巧の誕生日期待しないで」
「はは、期待してない」
「それはそれでムカつく」
「別に人間得意不得意があるのは当然だろ。俺は昔から結構好きだったんだよ料理。別に男だとか女だとか関係ないと思うし。さー飲むか」
彼は冷蔵庫からお酒も取り出す。私は飛び跳ねて席に座った。
「やった、明日休みだしいっぱい飲める!」
「ほんと酒好きだな杏奈は」
「凄い料亭みたい、豪華な一日。巧ありがとう!」
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