引っ越しました

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 ほうっと息を吐いた。真っ白な壁に傷一つない新品の床、この部屋を二次元の王子様たちで着飾れるなんてワクワクだ。  早速段ボールの一つを荷解きしようと座り込んだところへ、ポケットに入れておいた携帯が鳴り響いた。それを取り出して見ると、従姉妹の麻里ちゃんだった。  麻里ちゃんは昔から仲のいい、私より三個年上のお姉さんだ。実家も近所だったので、幼い頃からよく遊んでもらっていた。何を隠そう私が二次元にハマったきっかけも彼女なのだ。  麻里ちゃんは今は結婚して少し遠くへ嫁いでしまったので、中々会えなくなったがこうして連絡は取り合っている。この世で一番信頼している姉のような存在なので、私は今回の結婚についても彼女にだけ打ち明けていた。  話を聞いた麻里ちゃんは唖然として反対した。でもその時にはもうすでに婚約届を巧さんに預けてしまった後で引き下がれなかった。『私が二次元を教えなければ』とかって項垂れてたけどそんな人生お断りだ。 「もしもし麻里ちゃん?」 『杏奈? 今日引越しだったよね?』 「うん、運び入れは終わったよ。ゆっくり荷解きするところー」
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