引っ越しました

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『はあ……私は気が気じゃないよ、大丈夫なのほんと?』  心配そうな声が響く。麻里ちゃんの不安げな顔が目に浮かんだ。 「まあなんとかなるんじゃない? お互い自分の部屋ちゃんとあるし」 『襲われたりしない?』 「そんなことして困るの向こうだよ、藤ヶ谷グループの副社長。世間体が気になるのはあっちでしょ」  それにだいぶ想い入れてるお相手の人がいるみたいだし。 『二次元もいいけどさあ……三次元にも、もっとマトモな交際のお話山ほどあったでしょ? 敢えてこんな無茶苦茶な話選ばなくても』 「三次元に興味ないからね。お互い無関心な人と結婚しとくのは私にも好都合だし」 『やっぱり杏奈に二次元を教えたこと後悔してる』  麻里ちゃんが沈んだ声で言ったもんで、私はつい笑ってしまった。  二次元たちとの出会いは小学生の頃だ。当時、引っ越しが予定されていた私は、同じ塾に通う好きな男子に手紙を渡した。別にラブレターでもない別れのお便りだったのだが、恥ずかしかったのか迷惑だったのか目の前で捨てられた。
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