引っ越しました

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『食事とかどうするの? 掃除とかもさ、ちゃんと決めておきなよ。二人とも働いてるんだし、一緒に暮らすなら揉め事したくないでしょ?』 「ああ……家事かあ」  正直あまりに忙しくて何も考えていなかった。でも確かにそうだ、誰かと暮らすというのはそういうこと。  しかし、なあ……私は唸る。  仕事に忙しい藤ヶ谷巧が家事をするなんて想像つかない。そんな時間ないんじゃないかと思う。でもだからといって、私が全部こなすのもどうかと思うな、自分も家事得意じゃないし。 「ああめんどくさい」 『我慢しすぎないようにね。あ、ごめん宅配便が来たわ、また電話するね』 「うん、バイバーイ」  相手には見えないというのに、私は手を振って麻里ちゃんに別れを告げた。通話を切り、改めて先程話した内容を思い出す。  家事に役割、かあ。  思えば購入しておきました、なんて言われたけど私は家賃どうすればいいんだろう。もしいらない、と言われたら、家賃が浮く分家事ぐらいしてあげるのが筋ってものか?  でも正直料理はそこまで上手くないし、プライベートはだらしないことが多い。人の分の家事なんて手が回るだろうか。
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