引っ越しました

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 さらには掃除の場所と当番も細かく決められていた。トイレ、キッチン、お風呂、リビング、ダイニング、廊下……それはちゃんと私と彼は平等な分担だった。 「気に入らないところは書き換えればいい」  ぽいっとボールペンを投げられた。私はただぽかんとして目の前の顔を見る。 「なんだ変な顔で見て」 「ねえ、家賃も生活用品も出してもらうのに家事もこんなに平等でいいの?」 「はあ? それが普通だろ」 「そもそも巧さん私より絶対仕事で忙しいのに家事する暇あるの?」 「別に毎日ほんの数十分費やせば掃除くらいできるだろ」  なんだこの男。ちょっと見直したじゃないか。私は素直に思う。  きっと家事なんて私任せで放置するのかと思った。ちゃんと当番制を提案してくるだなんて、予想外。  しかしこの人がお風呂掃除とかしてる光景全然想像つかないんですけど、まあいいか。 「納得したならこのままで行く」 「あー待って、少しだけ。トイレ掃除は私がしたい、交代制じゃなくて」 「何で」
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