引っ越しました

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 広いリビングに向かい冷蔵庫や戸棚を漁る。つまみなども十分過ぎるほどあった。中から適当にいくつか選び、グラスと共に持ってテレビ前に移動する。  フカフカのソファに腰掛け、大きなテレビをつけた。一人暮らしで見ていた大きさとはだいぶ違うためまだ慣れない。映画館のような感覚だ。 「さーて一杯やりますかー」  缶を開けてみれば、プシュッといい音がする。レモンの爽やかな香りを嗅ぎながら炭酸を流し込んだ。  喉を通っていく酸味とアルコールの香りに思わず顔を綻ばせる。仕事終わりの酒は格別美味しい。私は適当にテレビの番組を変えながらそれを眺め、ぼんやりとリラックスしていた。  一人飲み始めて約十五分後。さて次のお酒を開けようかと思っていたとこに、まさか玄関の鍵が開く音が響いたので驚く。  藤ヶ谷副社長、こんな早くご帰宅? 仕事で毎日忙しいって言ってたのに。  そう思いながらまあいっかとテレビに視線を戻す。足音が響いたと同時に、リビングの扉がガチャリと開かれた。 「おかえりなさい」
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