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ほんの数十分で、手際良く彼は料理を完成させたらしい。フライパンまで洗って後片付けをすると、彼は大皿に乗った料理を私の前まで運んできたのだ。
コトン、と二皿置かれる。野菜やお肉を炒めた物たちだった。
「え、やだ美味しそう!」
「つまみで夕飯というならそれくらいつまんでおけ」
「私食べていいの?」
「そんな食生活でよくそのスタイル保ってたな。もう少し年取ったらまずいぞ気をつけろ」
呆れたように言った男にややムカついたが、それより目の前の料理の香りにやられていた。私は素直に箸を手に取り頬張ってみる。
「うわお、美味しい。凄い」
「そんなもの誰でも作れるだろう」
すみませんね、『そんなもの』すら作れなくて。そんな返事を心の中だけで行うと、私はただぱくぱくとそれを食べ続ける。
「俺はシャワーを浴びる」
「食べないの?」
「帰ったらすぐに風呂に入りたいタイプなんだ。杏奈はまだか」
「うん、寝る前に」
「わかった」
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