引っ越しました

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 巧は頷くと、さっさとリビングから出て行った。まさか家事をさせられるかもと心配してたのにご飯を作ってもらうことになるとは。まあ、頼んだわけじゃないしいいよね。  そんなことを一人思いながら舌鼓を打つ。意外だなあ、料理するなんて。性格以外完璧じゃん。  いい食感のキャベツを口に入れて噛んだ瞬間、再びリビングの扉が開かれた。あれっと思い出入り口をみる。  巧がどこか気まずそうに視線を泳がせていた。 「どうしたの」 「杏奈。洗濯物」 「あ」  言われて思い出した。今日は朝から大雨で、外に洗濯物が干せなかったので、浴室にある室内乾燥機を使用したのだった。朝干して取り込むのを忘れていた。  私は立ち上がって笑う。 「ごめんごめん、すぐ片付ける」 「いや、いいんだが……  こうなることを予測して、普通下着ぐらいは自分の部屋に部屋干ししないか?」  巧は腕を組んでため息をつきながら言った。ああ、なるほど。やけに気まずそうにしてるなあと思っていたら、干してあった私の下着を見てしまったからか。  私は首をかしげた。 「下着くらいいいじゃない、裸でもあるまいし」
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