引っ越しました

22/38
前へ
/382ページ
次へ
 私がいうと、ギョッとしたように彼は目を見開いた。信じられないコイツ、といった顔だ。 「お前……」 「何で見ちゃった方がそんな態度なの、下着の一枚や二枚」 「お前仕事の時と印象違いすぎる。敏腕秘書はどこへいった」 「だから仕事とプライベートは別よ」  私が言い放つと、巧はため息をついて片手で顔を覆った。あれ、どうしてそんな反応? この男なら、私の下着を見たくらいじゃ何も気にしなそうなのに。 「なるほどな、今まで男と関わらなかったからそういう感覚に疎いのか」 「そういうって?」  私が聞き返すと、巧は顔を上げて鋭い目つきで私を見る。つかつかと歩み寄り、私を上から見下ろした。 「危機感を持て。俺も男なんだから」 「そりゃ知ってるけど」 「俺がお前を襲わない保証はないだろ」 「だってすごく好きなシングルマザーがいるんでしょ」  キョトンとした私に対して、さらに彼は呆れたように首を振った。 「あのな。男は、別に好きじゃない女でも抱けるんだよ」 「それは知ってるけど、あなたはそんな頭の悪い雄とは違うでしょう?」  私が言うと、驚いたように目を丸くする。
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3132人が本棚に入れています
本棚に追加