引っ越しました

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 巧はそこそこお酒に強いらしく、もうビールを一缶空にしていた。自分で作った料理を頬張り食べていく。 「お前、本当に男に興味ないんだな」 「え? ないよ(三次元は)」 「ふうん」 「何、今更」 「再確認しただけ」 「そっか、普通ならきゃあ! 上半身裸! ってなるところ?」  そういえば少女漫画ではそういう反応だ。少なくとも恥ずかしそうに顔を赤くして俯くのがヒロインのお決まり展開。筋肉をじっと見つめてたなんて私くらいのもんかな。  そりゃ、珍しいしかっこいいなあとは思うけれど。それは例えば、絵画とか彫刻とか見た時みたいな感覚で、性的な魅力とは到底思えない。なんでここまで三次元に興味ないのかしら私って。 「まあ、あんな凝視は普通しないだろうな」 「あは、ごめんごめん」 「いや気楽でいい」  そういったくせに、彼はどこか面白くなさそうな顔をしていた。恐らく今までの人生、自分をちやほや囲む女ばかりだったので、無反応な私がつまらない、というところか。  最初から興味ないところが理想的だって言ってたくせに、何を今更。 「仕事はどうだった」
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