引っ越しました

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 まあいっかあと思いながらぼうっとテレビを眺めていた。よく見るバラエティ番組だ。  食事も終わったので、巧はてっきり自室へ戻っていくのかと思っていた。ところが、お皿も丁寧に洗い仕舞い終えたあと、彼は無言でまた私の隣に腰掛けた。そして長い足を組んだまま背もたれにもたれてテレビを見始めた。 ……ううん意外、テレビとか見るんだ、藤ヶ谷巧。しかもこんな馬鹿っぽいバラエティ。  まあ彼の家なのだからどこで何をしようが自由だ。私たちはそのまま無言でくつろぎながらテレビを眺めた。  午後九時もすぎ、私はようやく入浴を済ませた。  高級マンションのお風呂は広いし綺麗、ジャグジー付き。こんなのテレビの中だけだと思っていた。ところでジャグジーってぶくぶくさせて何が楽しいのかちっとも分かんない。  それでも広々としたお風呂はテンションが上がる。化粧を落としパジャマに着替える。自然と鼻歌が漏れてしまうほど、豪華な浴室は女の気分を上げる。  そのまま肌の手入れもしっかり終えると、肩にバスタオルをかけたままリビングへと戻っていく。お風呂上がりに冷えた水を飲もうと思ったのだ。
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