引っ越しました

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 ガチャリと扉を開けると、そこのソファに巧はまだいた。気だるそうに腰掛けテレビを眺めている。私が入ってきたことに気づきこちらに視線が流れる。ぱちっと目があった瞬間、彼の目がまん丸に見開かれた。 「あーここのお風呂広くって綺麗で気分いいねー。でもあれ掃除大変だね」 「……杏奈」 「あ、ねえ入浴剤って入れないタイプ? 私入れたいんだけど適当に買ってきといていい?」 「お前なんだその格好は」  冷蔵庫に向かい水を取り出した時そんなことを言われて振り返る。巧は呆然といった様子で私を上から下まで眺めている。  私はキョトンとして答えた。 「え? パジャマ」 「…………うそだろ……  何でそんなダサいの?」  彼は馬鹿にしている、と言う感じではなかった。ただ本当に素直に疑問が口に出ました、みたいな顔で私を憐れんだ顔で見ている。  私は自分のきている服を見た。  高校の頃体育の授業で履いていたハーフパンツに、大きくおにぎりのイラストが書かれたTシャツ。ショートケーキ柄の靴下。  別段普通の部屋着なのだが。 「え、ダサい?」
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