引っ越しました

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「当たり前でしょ? 浮気された女なんてレッテル貼られるのごめんだよ! 一生可哀想って目で見られながら生きてくの嫌だもん」  鼻息を荒くして言う。芸能人とかだって、男が不倫すると同時に奥さんの方にも注目される。私がこの男と結婚したって言うことは会社中に知れ渡っているんだし、浮気されて可哀想な高杉杏奈なんてなりたくない。  力説した私を、巧はどこか不満げに見てきた。 「え、何」 「いや、さ……本当に俺が他に女いること認めてるんだなって」 「へ? 何を今更。そういう契約だったでしょ?」  何を言い出すんだと目を丸くしてしまった。わざわざ私に契約書まで作ってプロポーズしたくせに。あの契約を認めたから今こうして一緒に住んでいるというのに。  巧は視線を落として言う。 「まあ、そうだけど。女ってほら、独占欲が強い人多いだろ、形だけでも夫婦になると、他に相手がいるのが疎ましくなるかもと思ったんだが」 「どっかの漫画の読みすぎだよ」 「……まあ、杏奈は恋愛対象が男じゃないしな」
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