引っ越しました

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 あ、そういえばそう言うことになってるんだった。と言いかけて慌てて飲みこむ。彼は私のそんなところを気に入って契約を持ちかけたのだから、あえて違いますなんて弁解はいらない。(三次元の)男に興味ないのは間違いないのだし。  巧はぼんやりとした顔でテレビを眺めていた。世の女はみんな自分を独占したがるとでも思っていたのだろうか。自意識過剰め。  目の前のグラスをとって水を飲む。 「なあに、男に興味ない私がいざ巧と暮らし始めたらあなたを好きになって、他の女がいるなんてー……っていう修羅場想像してた?」 「そういうパターンを全く考えてないわけではなかった。性格上いつでも最悪の展開を予想する主義でね」 「どこからその自信湧いてくるの?」 「どこを見ればそんな質問できるんだよ、ステータス満点だろ俺は」 「性格という項目マイナスだけど」 「…………」  ぐうの音も出ないようだ、ちょっと歪んでる自覚はあるらしい。私はほくそ笑む。  巧は少しだけ口を尖らせて言った。 「お前もいい性格してるよ」 「褒めてもらってありがとうございます。さーて私は寝ようっと。寝る前の作業もあるし」
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