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翌日曜日。
お互い仕事が休みの私たちは、巧の運転する車に揺られて少し遠出をしていた。休日のデート……なわけもなく、目的は明確にある。
それは私のばあちゃんのお見舞いだった。
初めから私の祖母について事情を知っていた巧と、結婚の挨拶にいこうと話していた。だが引っ越しだの巧の仕事が忙しいだので、ようやく時間が合わせられたのだ。巧はさすがはあの大企業の副社長なだけあり、忙しい毎日を送っているらしかった。平日は帰りも遅いことが多い。いや、例のシングルマザーとでも会っているのか? 別にどうでもいいけど。
一緒に暮らしていても顔をゆっくり合わせたのはあの雨の日くらいだった。
そんな多忙な毎日の中ようやく訪れた休日をお見舞いで潰してしまうのはやや申し訳なくも思ったが、彼は疲れた顔も見せず平然と車を運転していた。まあ、こういう約束だったもんね。
祖母は末期の癌だった。治療もせず、現在は緩和ケアのためにそれ専門の病院に入院している。痛みのコントロールと、あとは毎日を穏やかに暮らす目的の病院だ。
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