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「時々会いにきてやってるんだろ。きっとそれが一番の見舞品だ」
「げ、何ちょっといい事言ってる。どうしちゃったの」
「お前はほんといい性格してるよな」
呆れたように言う巧の隣に、笑いながら並びそのまま駐車場を歩んで行った。
エレベーターで祖母が入院している階まで登り、病室まで廊下を歩く。個室の部屋だった。最後に尋ねたのは、確か二ヶ月以上前だったか。
忙しくて中々来れないのを歯痒く思っていた。特にここ最近はこの男との契約について時間を取られることが多く間が空いてしまったのだ。
見慣れた扉の前にたちノックをする。中から返事が聞こえた。
「おばあちゃーん、きたよー」
私は扉を引きながら声をかけた。そこそこ広めの個室の奥にあるベッドに、上半身を起こしたままこちらを向いているばあちゃんがいた。半分白髪混じりのグレーの髪は、肩まで伸びて揺れている。
鼻には酸素チューブが繋がっている。それから腕には点滴。以前会った時よりぐっと痩せたその姿に一瞬驚いたが、ばあちゃんはすぐに元気そうな声で笑った。
「杏奈ちゃん! 待ってたのよ〜旦那様を早く見せて!」
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