お見舞い

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「いやあ、杏奈ちゃん付き合ってる人がいるなんて全然言ったことなかったのに、こんな素敵な人と結婚なんてびっくりよ! 長生きはしてみるものね」  目が線になって無くなってしまうくらいに祖母は微笑んだ。それはそれは、嬉しそうな顔だ。 「ごめんね、えーと、内緒にしてて……巧はちょっと有名な人だし」 「そうなの。いいのよ、結果二人が幸せに結ばれたなら。それにしても想像以上の男前だわあ、杏奈ちゃんいい人見つけたのね」  巧はにっこりと笑う。 「そんなことありませんよ」  嘘だ、と私は思った。きっとこの男の心の中は、「当然だ満点の夫だろ」とドヤ顔しているに違いない。 「どうやって知り合ったの?」 「仕事でお会いして、私が杏奈さんに一目惚れしたんですよ」 「あら!」 「それから食事に誘って」 「あらあらあら!」  両手を口に当てて嬉しそうに笑う祖母を見て、なんだかなんでもよくなってしまった。実は契約結婚だとか、この男は腹黒だとか、そんなこともういいか、って。  おばあちゃんがこんなに楽しそうにしてるの、久々に見たから。
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