お見舞い

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 末期の癌なので長くは生きられないと医者から言われていたが、高齢だと進行も遅いらしい。以前よりぐっと顔色は悪いが、それでも笑う元気がまだあるのだから私は嬉しい。  ニコニコして巧と話す様子をただ微笑ましく見ていた。彼もやはり、完璧と呼ばざるを得ない夫を演じてくれている。 「杏奈ちゃんと一緒に暮らしてどう? この子ちょっと雑なところあるでしょ?」 「はは、それは私も同じですから」 「優しいのね〜。いいわね、うちのおじいちゃんも優しい人だったのよ。巧さんにちょっと似ているかも」 「それは光栄です」 「杏奈ちゃんのどこが好きなの?」  まるで少女のようにはしゃぎながら質問するばあちゃんを慌てて止める。契約上の夫婦に、そういった質問はちょっと厳しい。 「もうばあちゃん、恥ずかしいからー……」 「そうですね。とにかく明るくてまっすぐですよ。私にはない陽気さですから、一緒にいてとても楽しいです」  サラリと述べた彼の横顔をつい目を丸くして見る。満点の夫(の演技)、すごいな。私もし同じ質問されたらうまく答えれる自信ないや。
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