お見舞い

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「杏奈のおばあさんのために。凄く楽しみにしてたし。うちの親は盛大にやりたがるだろうけど、別に家族だけの小さなものにしておばあさんに参加してもらえば」  彼がそんな提案をぶつけてくるとは思わなかった。ただ目を丸くして彼を見つめる。  私と結婚式を挙げるだなんて、別に巧にとってなんのメリットもないからだ。好きでもない女とお金をかけて式をあげるなんて、労力も時間も無駄。例えばいろんなお偉いさんを招いてっていうならまだしも、家族間だけの式だなんて。  それなのにそんな提案をしてくれたのは、紛れもなく私の祖母の事を考えてくれたからなのか。さっき微笑みながらばあちゃんと話したのは気休めじゃなく、実現させるつもりだったのか。 「…………何」  私があまりに長い時間ぽかんとして彼を見ているもんだから、巧は不機嫌そうに言った。 「い、いや、びっくりして。巧がそんな気遣いまでしてくれるなんて……」 「おばあさんを安心させたくてこの結婚に踏み出したんだろ。そこに協力するのは当然だろ」 「だって、こうやって挨拶してくれただけで十分なのに。結婚式まで……」
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