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「仰々しいのはごめんだけど、家族だけ招くくらいなら別にいいだろ。それを楽しみにしてるってあんな顔で言われちゃな」
苦笑していうその横顔をみて、私は微笑む。
いつでも自信家でちょっと歪んでるやつだなと思っていたけど。なんだ。ちょっと優しいところ、あるんだなあ。
「……だから何。変な顔でじっと見るな」
「変な顔って。笑ってるのよ。巧も人間みたいな優しいところあるんだなって感心して」
「俺はいつでも優しいだろ」
「本気で言ってるの?」
「んでどうする。規模の小さな式ならそんな時間もかけずに準備できるだろ。遠出は辛いだろうから、おばあさんの病院からなるべく近い式場でも見つけて」
本当に具体的に考え出した彼にまた私は笑ってしまった。変なところで真面目で気がきくんだから。何この人、変な人!
「ありがとう。でもまあ、もうちょっと考えておくよ。お互い仕事が忙しいのは本当だしさ」
「わかった」
「ありがとう、巧」
繰り返し感謝の気持ちを述べた。嘘の婚姻で結ばれただけの私たちだが、そんな形のお互いを思いやれる人でよかったと思った。
とりあえず、家に帰った後巧に感謝の気持ちを込めておにぎりのTシャツを買ってやろうと思った。これは、私のカードでね。
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