来客者

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 了解しましたと声をかけ、再びキッチンへ入った。鍋に火をかけ、お皿を用意する。麻里ちゃんはおずおずとダイニングゲーブルに腰掛けた。 「なにこのオシャレな家具は。日本で売ってんのこんなの?」 「全部巧が買った」 「はあーもうため息しか出ない」  仕上げの調理をしながら、私は笑う。 「私もようやくこの家に慣れてきたよー」 「てか、意外と上手くいってるんだね? もっと疲れた顔してるかと思ったよ」  麻里ちゃんが意外そうに私を見る。スプーンを二つ取り出しながらいう。 「そうね、思ったより楽だよ。巧は仕事忙しいから顔を合わせる機会も少ないし、会っても意外と気を張らなくて済む相手ていうか。普通に二人並んで座ってテレビ見てるよ」 「へえーえ……?」  麻里ちゃんの目が丸くなった。 「驚き。杏奈がねえ。藤ヶ谷巧って有名だけどいい噂も聞かなかったりするし」 「ああ、自信家だし腹黒いよ。はは、でもまあ性根が腐ってるわけじゃなさそう。この前もばあちゃんのお見舞い付き合ってくれてさ」
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